フレームワークと仮説

 前回は、仮説を持つことで、問題に気づけるようになる、ということを話しました。
今回は、どのように仮説を立てるのか、ということを考えたいと思います。

■仮説を立てるには
 仮説の立案には経験、勘といったものに頼らざるを得ない部分があります。何しろ今までやったことのないこと、考えたことのないことに対して、なんらかの考えを立てるのですから、そうならざるを得ません。

 しかし、あてずっぽうに仮説を立てても、まったく検討はずれとなってしまいます。なにかうまく仮説を立てるという方法はないのでしょうか。

 仮説の立案に有効な道具が存在します。それは”フレームワーク思考”です。

フレームワークとは

 フレームワークとは”枠組み”を意味します。ここではまず経営学の領域でよく使われる”3C”や"5Forces"などを思い浮かべてください。(詳しくはこちら)

 こうしたフレームワークには、以下の3つのメリットがあります。

1. 問題に影響を与える要素を”ヌケモレ”なく検討することができる
2. 問題に影響を与えそうな事柄、要素を改めて考える必要がない
3. 議論の際の共通言語として使用することができる。

 例えば”3C”はある特定の企業の経営を考える際に、”市場”、"競合"、”自社”を考えれば十分であることを保障してくれます(1)。また、企業の経営に影響を与える要素はなんだろうと頭を悩ませる時間を節約できます(2)。さらに他者と議論をする際に、この3つを考えるという共通認識にのっとって議論を進めることができ、スムーズなコミュニケーションが可能になります(3)。

 そしてこのフレームワークは仮説の立案に強力な威力を発揮します。例えば前回のA君がBさんに行為を持ってもらえないのは”自分には足りない部分がある”、そしてそれは”スポーツ刈りである”ということでした。確かにこれらがBさんがA君を好きにならない理由であるのかもしれませんが、そうではない可能性も多数あります。
 
 そこに例えば下記のような”恋愛のフレームワーク”なるものが存在していたとします。

(例)恋愛フレームワーク : 以下の項目について、女の子に好かれるためにどうあるべきか考える。
◇勉強

  • 努力でなんとかなる教科
  • 努力では無理な教科

◇運動

  • 努力でなんとかなる分野
  • 努力では無理な分野

◇ルックス

  • 努力でなんとかなる部分
  • 努力では無理な部分

◇性格

  • 努力で変えれそうな部分
  • 努力では無理な部分

このようなフレームワークがあれば、A君はもっと広い視野で考えることができたのではないかと思います。

フレームワーク思考は万能か?

 ではあらゆる問題に対して、さまざまなフレームワークを駆使すれば常に妥当な仮説の立案が可能になるのでしょうか。
それは"NO"だと思います。何もないところから仮説を導き出すには有効ですが、逆に縛られてしまう可能性もあります。

 A君、Bさんの例にもどりますが、もしBさんが”ユーモア”のある男の子が好きだったら、上のフレームワークは意味を成しません。

 つまり、フレームワークは唯一絶対のものではなく、扱うことのできる問題に得意・不得意が存在しているということになります。

 では仮説を立てるというのはやはり勘と経験に頼らざるを得ない世界なのでしょうか?

■”フレームワーク構築力”を身に付けよう

 フレームワークがない問題に、どのようにしてうまく仮説を立てればよいのでしょうか。その答えの1つは、”自前でフレームワークを作る”です。フレームワークには3つの利点があるといいました。逆に言えば、これらを満たせば”フレームワーク”ということができるということです。
 
 3つのポイントのうち、特に1つめの”問題に影響を与える要素を”ヌケモレ”なく検討することができる”というポイントは、フレームワークの肝です。これを満たせば、フレームワークであるといっても過言ではありません。また3つめの議論の際の共通の言語になる、という点も見逃せません。
 ただし2つめに関しては、自分でフレームワークを考える際にはどうしても達成できないポイントです。

 ですので、フレームワークがない場合には、1と3を満たすようなフレームワークを自前で作るという選択肢があります。ただ、その際どうしてもフレームワークの構築にも知識と経験、勘が要求されます。(A君が自前のフレームワークを構築したとして、どれだけの項目を考えることができるか、ということはそれまでの恋愛経験や友達からの話などに依存するのではないでしょうか)

 しかし、こうしたことを考えてみるだけでも、かなり違ってくるのではないかと思います。(A君も勉強やスポーツのことなどを考えれば、行動や結論は異なってきたかもしれません)


■さまざまなフレームワーク
 
 先ほども少しふれましたが、フレームワークにはさまざまなものがあります。よく知られているのは、経営の分野のフレームワークです。経営学以外の世界にもフレームワークは多数存在しています。理系・文系の学問領域を問わずフレームワークと呼べるものは多数存在しています。
 こうしたものを少しずつ知っていきたいと考えています(別にひたすらフレームワークを紹介し続けるサイトも作ればよいかなと思います)。また同時に一般社会のなかでフレームワーク思考はもっとあってもよいと思うのですが、自分はよく知りません。今後勉強していきたいと考えています。
 
■次回予告

 今回は仮説とフレームワークについてお話しました。今回は、”気づく”ための方法論として、仮説を立てること、その際にはフレームワークを用いるとよりよい仮説が立てられることを話ました。
 次回は”気づく”ための方法論として”比べる”、”続ける”ということについてお話したいと思います。

■この日記の今後の進め方

 この日記は、問題に気づけるようになることが目的です。問題に気づくための方法論を確立し、その後、日ごろのニュースなどから問題点を見抜く、という試みをこの日記上で行っていきたいと考えています。今後の想定のアジェンダは以下のとおりです。<気づくための方法論>
・仮説立案(済み)
フレームワーク思考(済み)
・比較法
・定点観測法<気づきの訓練>
・社会ニュースの分析など