”気づく”ための方法 〜比較する〜

 前回まで、”気づく”ということには、仮説を持つということ、さらにフレームワークを用いて仮説を立てるということが有効であることを述べてきました。
 今回はちょっと違った観点から”気づく”ための方法を述べたいと思います。

■比べることで”わかる”ヒト
 結論から言うと、ヒトは何かと比べることで事実を認識する、比較対象や基準があってようやく物事を認識することができる、という特性があります。
 比較によって認識することができるということは、写真やテレビ越しにモノを見たときに如実に感じられると思います。例えば、魚の写真を撮ったとします。白いバックに1匹の魚を置いて写真をとった場合、その魚のサイズが大きいのか、小さいのかの判断を付けることはすごく難しいと思います。しかし、魚とともに普段良く目にして大きさがわかるもの(煙草の箱など)を並べて写真を撮れば、魚の大きさが大体わかると思います。
 このようにヒトは比べることによってモノの大きさを認識していることがわかります。

(以下2008/10/27修正)
■判断などの高度なヒトの思考でも比較は有効
 ヒトという動物は、どうやら”比較”することでさまざまなことに気づくことができる動物である、といえそうです。
 次に、視覚のような五感による単純な比較ではなく、もう少し複雑な比較について考えてみたいと思います。
 例えば、折りたたみ傘を買うのか、ステッキタイプの傘を買うといった判断をするとします。どちらの傘を買うのか、という判断のためには、適切な評価項目を設定して、2つの傘を比較する必要があります。例えば”持ちやすさ”、”値段”、”デザイン”といった観点で2つを比較すると、どちらの傘を買えばよいのかを判断することができます。
 どちらかを選択するというためには、適切な”項目”を設定して”比較”することで、その違いに気づくことができます。
 五感で起こる比較は、特に意識しなくても脳や感覚器が自然に処理していますが、このような判断のような概念上の比較は意識しないと行えません。概念の比較を行う場合には、適切な項目を設定する、ということを意識しなけれな、気づくことができません。
 
■”比較”は分野を問わない強力な分析ツール
 学問の世界で、”比較”は基礎中の基礎の方法論です。例えば生物学において、実験結果を正しく解釈するには、何かとなにかを比較することが必須です(対照(コントロール)を設定する、ということを言っています)。
 例えば、煙草を吸うヒトが肺がんになる、ということを証明するには、理想的にはまったく同一体をもち、行動するヒトが2人存在して、煙草をすわない人生と煙草をすう人生を送ってもらい、どうなるか比較しなければなりません。さらに統計的に意味のあることをいうためには、そのような2人が何百組もいなければなりません。
 実は一卵性双生児はこの条件に近く、喫煙と癌の関係のみならず、さまざまな医学の研究の対象となることが多いのです。(何百組も集めるのは大変なので、通常は数組などです)
 医学や生物学の分野では比較は強力なツールです。しかし、”比較”は医学の世界のみならず、日常生活でもさまざまな問題か出来事に”気づき”を与えてくれます。
 例えば、今の自分は過去の自分と比べることで、太った、やせた、大人になった、などの変化に気がつきます。また同じ職場の誰かと自分を比べることで、自分はどのようなヒトなのか(身体的特徴にかかわらず、さまざまな点について)に気がつくことができるかもしれません。このように比較は日常のヒトの世界においても、いろいろな情報をもたらしてくれます。
 その際、どんな観点で比較を行うのか、を意識してください。そうすることで、より深い理解が得られるのではないかと思います。
 このように”比較”する、ということは、気づきを与えてくれる強力な武器です。今後、”比較”による分析を実践していきたいと思います。その際には、比較するとどんなことがわかるのか、どんな良い点があるのかついて具体的に述べていきたいと思います。

■この日記の今後の進め方
 この日記は、問題に気づけるようになることが目的です。問題に気づくための方法論を確立し、その後、日ごろのニュースなどから問題点を見抜く、という試みをこの日記上で行っていきたいと考えています。今後の想定のアジェンダは以下のとおりです。<気づくための方法論>

・仮説立案(済み)
フレームワーク思考(済み)
・比較法(済み)
・定点観測法<気づきの訓練>
・社会ニュースの分析など

次回は、定点観測法について紹介します。