ヨーロッパの各国が、単位CO2あたり多くのGDPを生み出せるのはなぜか 〜経済がCO2に依存しない国のひみつ〜

昨日に引き続き、今日もCO2とGDPの関係です。

今日は、昨日わかった欧州諸国は単位CO2あたりたくさんのGDPを生み出すことができるのはなぜなのか、ということについて考えています。


■検討のアプローチ
今日は、以下の仮説を1つずつ検証していきたいと思います。


仮説1. 化石燃料から他のエネルギーへの移行が進んでいる。
一次エネルギーにおいて化石燃料の占める割合が少なく、少ないCO2で経済活動を行うために必要なエネルギーを生み出すことができる。


仮説2. エネルギー効率が良い。
(仮説1が間違っていた場合、つまり化石エネルギー比率がGOCの低い国と比べても変わらない、もしくは大きい場合)CO2にあまり依存せずにたくさんGDPをあげることのできる産業によってGDPが支えられている。

この2つの仮説を、各国のデータを用いて検証していきたいと思います。


※GOC = GDP on Carbon.単位二酸化炭素あたりのGDPの額。1/19の検討で定義した指標(詳しくはこちら)。


■仮説1: 化石燃料から他のエネルギーへの移行が進んでいる。
この仮説を検証するために、昨日検証した国のうち、データを取るある国のエネルギー構成比を検討しました。


一次エネルギー総供給量に占める化石エネルギーの割合が低いランキング(2007年度)
化石燃料=石炭+石油+天然ガス


ランキング/国名/化石エネルギーの占める割合
1. フランス 51.2%
2. インド  70.1%
3. カナダ 75.6%
4. ドイツ  80.7%
5. アメリカ 85.6%
6. 中国 86.9%
7. ロシア 89.4%
8. イギリス 89.7%
9. イタリア 90.5%
新日本石油のホームページから引用


これをみると、GOC 1位フランスは化石燃料の割合が最も低い。化石燃料の割合が低いのは、原子力発電所による電力供給量の割合が多いためである。

フランスの例から、GOCが低いのはエネルギー構成において化石燃料への依存度が低く、おなじことをしても二酸化炭素が出にくい、という仮説1が成り立つといえるのではないだろうか。

そのほかの昨日述べたGOCが高い国を見てみると、化石燃料の割合が高い国が多い。GOC 2位、3位のイタリア、イギリスは化石燃料の割合が多い。ドイツもGOCでは下位のカナダ、インドよりも化石燃料の割合は多い。


これは仮説1にあまりそぐわない。イタリア、イギリスの2国は、CO2を出す化石燃料に依存しながらも、日本よりもより多くのGDPを稼いでいるようだ。


これはなぜだろうか。この2国と日本を例に、次の仮説2を検証してみた。


■仮説2 エネルギー効率が良い。

この仮説の検証のために、各国の主要産業のGDPに占める割合を調べてみた。


イタリア、イギリス、日本のGDPにおける主要産業の構成比


     農林水産、製造業、建設業、サービス業
イタリア 2% 22% 5.1% 63%
イギリス 0.6%  12.8% 6.3% 75%
日本 1.5% 21% 6.3% 62%
※日本は統計局ホームページより、その他の国はJETROホームページにあるデータより作成

この表を眺めてみて一つ分かったのは、イギリスは製造業の比率が低い(他国と比べて半分以下)こと。なんとなくイギリスは金融業、というイメージだったので、予想はしていたが、こんなに低いとは。


なお国の二酸化炭素の排出源は産業部門、つまり製造業が多数を占める。


参考:日本における二酸化炭素の排出源の割合


産業部門(=製造業) 37.2%
運輸部門 22.0%
業務その他部門(=サービス業) 15.5%
http://homepage3.nifty.com/shin_homepage/Environmental_Study/es_globalwarming6.htmより引用


つまり、産業部門=製造業がダントツに二酸化炭素を排出している。運輸部門などはサービス業に入れるのか、製造業にいれるのか微妙ですが・・・


製造業の比率が小さいということは、それだけでCO2の削減効果が見込める。


また部門ごとの二酸化炭素あたりのGDPの値を出す必要があるが、たぶん製造業よりも、サービス業のほうがCO2単位あたりのGDPは高いだろう。(サービス業は工場のようなエネルギーと資源をふんだんに使う装置は使わないので)

これらをあわせて考えるとイギリスのGOCの高さは、どうやら製造業の比率が低くサービス業の比率が高いことが原因である、といえそうだ。

よって、イギリスの例から、仮説2は成り立つと言えそうだ。

■2つの仮説のどちらでも説明が難しいイタリア
残るはイタリアである。


イタリアは製造業の割合も高く、GDP構成比としては日本に似通っている。なぜGDPの産業構成比が日本と似ているのに、GOCが日本に比べ高いのか(少ない二酸化炭素で多くのGDPを稼ぐことができるのか)。


その答えとして、イタリアはブランドやデザインで稼いでいるのでは、という仮説を立てた。

つまり、イタリア製の製品は工業やその他を含め、全般的にブランドやデザインによって付加価値が高く、単価が他国のよりも高い、もしくはブランドのライセンス料などでモノを売る以外のところで稼ぐ比率が大きいのではないか、と予想した。


今回は時間がないので、仮説検証はまた今度にしたいが、なんとなく正しい気がするのは僕だけ?



まとめ
今回の検証の結果、欧州の各国(フランス、イギリス、イタリア)は、以下の要因でCO2に依存せずに稼いでいる可能性が高い。


・一次エネルギー構成において、化石燃料の比率が低い(フランス)
・製造業の割合が低く、サービス業の割合が高い(イギリス)
・付加価値の高い(単価の高い製品)を製造し、販売している?(イタリア)


3者3様なカンジである。


日本が上記を目指せば、二酸化炭素に依存しないでGDP成長を遂げることのできるかもしれない・・・?

ただ、サービス業の国になるのか、製造業の国になるのかは、別の観点から検討が必要である。


これらは両立可能ではあるものの、サービス業の比率を高めるのはなんとなく違和感がある。
サービス業は基本的には内需の産業であり、製造業のように外貨を獲得することは出来ないからである。


GDPという観点では、内需の拡大はGDPを押し上げるのでなんら問題はないようにも思えるが、外貨の獲得ができないということは、国内の資源、資金の絶対量以上の成長は見込めないということである。(あるところまでいけば、定常状態か、下降がはじまる)


そういう意味で、外貨を稼げるサービス業を開発するか、もしくはイタリアのように付加価値のデザインに優れたブランド力の高い製品の開発、製造、販売に注力することが必要なのでは・・・?と素人ながらに考えました。


※上記は私の個人的な考察です。一般的にそういわれてるのか、どのくらい正しいのかは保障しかねます。もし本当かな、と思ったら、ご自分で調べたり、考えたりしてください。

もし間違いなどを教えていただければうれしく思います。