CO2削減とGDP成長は両立可能か?

今日のテーマはCO2とGDP


CO2削減とGDP成長は両立するのか、と考えた。


なんとなく、経済活動が盛んだとどうしても二酸化炭素は出ちゃって、(核融合などの夢のエネルギー源がない限り)経済成長と二酸化炭素削減の二つは両立し得ないんじゃないか、という素朴な疑問が浮かんだので、これを考えてみました。


■CO2とGDPに関する仮説
この二つにそもそも関係があるかどうかがわからないと、言う人もいるかもしれません。


ですが、私には、GDPとCO2排出量ってたぶん相関関係にあるのでは、という仮説があった。


なぜこんな仮説を思いついたかというと、ドイツの経済学者が、石油の消費量は、経済活動に関連がある、石油消費量があがれば、経済活動も活発になるということを指摘していることを知ったからです。(参考:『地球最後のオイルショック』新潮選書)


その先を考えて、石油を消費した後に生じるCO2と経済活動にも比例のような関係があるのでは、と考えた。もしそうならば、化石エネルギーに少なからず依存している現代の先進国において、CO2削減とGDP成長は両立するはずないじゃん!と思っていた。


そこでこの仮説は正しいのか検証し、CO2とGDPの関係について考えてみました。

■検証アプローチ
国単位で、その国のGDPとCO2排出量の関係を探る。
地球上にはたくさんの国があり、さまざまな国のGDPとCO2について比較することで、そこから導かれる法則のようなものはないか、検証する


GDPとCO2排出量はあまり相関していない

2006年のCO2排出量上位13ヵ国のCO2排出量とGDPをプロットしてみた。
※CO2のデータは全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイトより、GDPのデータは世界銀行の資料などを参照


縦軸がCO2排出量(億トン)、横軸がGDP(兆ドル)である
なおグラフ中のR^2は相関係数である。

相関係数0.4以上なので、少し相関がありそうだ。
また、グラフの上側にある極端な値は中国とアメリカである。
これらのはずれ値を除いた場合には、

となる。さらに相関係数(=0.4)は落ち、あんまり相関していない。


つまり、CO2とGDPには相関関係はあんまりないと言えそうだ。
思っていたこととはちょっとちがうなー、とすこしがっかり。


■少ない二酸化炭素でたくさんのGDPを稼ぐ国々

CO2排出量とGDPが相関していない、ということは、"少ないCO2でたくさんGDPを稼いでいる国"と"たくさんのCO2で少しのGDPを稼いでいる国"が存在している"のでは?
ということを考えた。


そこで、GDPをCO2排出量で割った指標を考えてみた。これはCO2 1万トンあたり、どのくらいのGDPを得ることができるか、という指標である。つまりこの値が大きいほど、一定のCO2でGDPたくさん稼いでいることになる。
この指標の名前をGOC(GDP on Carbon)とする。


GOCを国ごとに計算しならべた結果、以下のようになった。


2006年度のGOCランキング(GOCランク,国名,GOC量,GDPランクの順)
1位. フランス 59  6位
2位. イタリア 41  7位
3位. イギリス 40  5位
4位. ドイツ 36  3位
5位. 日本 35  2位
6位. カナダ 24  8位
7位. アメリカ 23  1位
8位. オーストラリア 20  13位
9位. メキシコ 19  11位
10位. 韓国 19  10位
11位. インド 7   12位
12位. ロシア 6   9位
13位. 中国 5   4位
(GOC = 億ドル/1万トン)


上の表から、"同じCO2排出量でも、稼ぎには国によってかなりの差がある"ことがわかる。(フランスは中国の10倍以上)


このランキングが何を意味しているのか。考えてみた。
その結果、以下のことが浮かんだ。

二酸化炭素を増やさないで、GDP増加させることは可能
◇日本はGOCランキングがそんなに高くない。他国と比べて単位あたりのCO2で多くのGDPを稼いでいるとは言えない
◇ヨーロッパ諸国にはGOCが高い国が多い


CO2とGDPは比例関係にないので、CO2を削減して、GDPを増やすことは、少なくとも国の単位では可能なのではないだろうか。


ヨーロッパ諸国は、少ないCO2でたくさんのGDPを稼いでいる国が多い。その理由はなぜか。


自国で工場などが稼動せず、CO2の排出を他国に押し付けているからなのか、それとも本当に自国の活動を石油へ依存させない産業構造、エネルギー構造になっているからなのか、疑問は尽きない。がそれはまた今度調べたい。
→考えてみましたので、興味のある方はこちらを参照ください。(1/25記)

また、地球全体で考えたとき、地球全体のGDP二酸化炭素の関係はどうなっているのか、国単位でみれば上記のようになっているが、結局は二酸化炭素GDPは比例関係にあるのかも見定める必要がある。


※計算間違い、考え違いがあればご指摘ください。。


■GOCが高いことのメリット
GOCが高い国は、"燃費がよい"、少ないCO2で経済がたくさん回るということである。


つまり、経済の化石燃料への依存度が小さい、といえるのではないだろうか。(もちろん排出される二酸化炭素のほとんどは化石燃料が起源、という前提だが)


よって化石エネルギーの枯渇やトラブルに強い経済である、といえる。


どのくらい強いのか(ゼロでも経済が回るのか)はまったくわからないが・・・


GDP成長も大事だけど、GOC成長も目指す 〜化石燃料の影響を受けない国を目指して〜
上記の考察から、相対的に考えれば、CO2を減らしつつGDPを上げることは可能なようである。(日本にはまだその余地がある)


日本はGOCの高い国を目指すべきなのではないだろうか。


理由はなぜか。地球温暖化のためにCO2削減をすべき、ということではない。私は、昨日述べたように、二酸化炭素の排出量削減による温暖化抑止効果は焼け石に水だと思っている。


ではなぜGOCが高い国を目指すべきなのか。


CO2が多いということは、それだけ石油(というか化石燃料)に依存しているといえる。だが、石油をはじめとする化石燃料はいずれなくなるものであり、特定の国がその算出をコントロールするという本質的に限りある不安定なエネルギーである


なお、冒頭にも述べたとおり、基本的には、石油の消費量は経済の規模を決めている(国によってその度合いが異なっているが)。


つまり、枯渇するかもしれない石油に依存している経済は、石油が枯渇すればとまってしまう、というリスクがある。


そのために、GOCをあげることを目指すべきだと思う。つまりGOCの分母=CO2を下げて、分子=GDPを上げることを目指す。
そしてそのためににはどうすればよいのか、ヨーロッパ諸国を参考にしつつ、考えてみる価値はあるのではないだろうか。


またこの意味で、CO2 25%削減は意味のある目標だと思う。
昨日は、温暖化防止の観点からはあんまり意味ないじゃん!というつっこみだったが、経済をまわすためのエネルギー戦略という観点でみると、ちょっと意味がありそうだ。


定点観測(たとえば二酸化炭素なら、世間ではどのように考えられているのか)の前に、自分の考えを整理した。
これからは、このような考察と、定点観測の両方を進めていきたい。


※上記は私の個人的な考察です。一般的にそういわれてるのか、どのくらい正しいのかは保障しかねます。もし本当かな、と思ったら、ご自分で調べたり、考えたりしてください。
もし間違いなどを教えていただければうれしく思います。