日本のCO2外交を考える 〜世界経済のためにCO2削減を呼びかけよう〜

今日はエネルギー問題と日本の二酸化炭素をめぐる外交についてです。ずーっとCO2のはなしばっかりですが、もう少しお付き合いください。


今回は、二酸化炭素とエネルギー問題の関係、二酸化炭素GDPの関係を考えると、世界経済を守るために、各国に二酸化炭素の削減を呼びかけるべきではないか、というお話です。



■エネルギー問題とは
まずエネルギー問題とはなにか。それは、エネルギーの供給が限界を迎え、どんどんと小さくなっていき、しまいにはエネルギーが枯渇してしまうかもしれない、ということです。


つまりエネルギーがなくなってしまうということです。


■エネルギー問題を引き起こす化石燃料
現在、エネルギー源は化石燃料原子力自然エネルギーの3つに大別されます。


このうち、自然エネルギーは太陽がなくならない限り、地球の地殻のなかの活動がなくならないかぎり続きます。つまり、半永久的に続きます。なので、エネルギー問題の原因にはなりえないものです。
ですが、これらからエネルギーを得る技術はまだそれほど発達しておらず、これらから効率よく発電することはできません。
実際これらからのエネルギー供給量はどんな国でも低い割合にとどまっています。


原子力はどうでしょうか。
原子力のエネルギー源であるウランは資源であり、原理的には枯渇してしまうエネルギーです。しかし、ウランは少ない質量でたくさんのエネルギーを出すことができます。そしてそれを効率よく電力に変換することのできる技術もあります。なので、エネルギー源として有望です。
実際、昨日紹介したように、フランスではかなり原子力に依存している状況です。
しかしみなさんもご存知のとおり原子力はコントロールを誤ると、チェルノブイリのように死の灰を撒き散らし、生物に広範囲、長時間にわたってダメージを与えるという危険性をつねにはらんでいます。そのため、依存度を高めない方針をとる国もあります。

ということで、エネルギー問題への解決策としてのポテンシャルはあるにもかかわらず、なかなか主役にはなれないエネルギーです。(危険度の捕らえ方にもよりますが)


そして最後は石油に代表される化石燃料です。
これらはエネルギー源として優秀です。つまり質量あたりのエネルギー量が大きい、効率よくエネルギーを変換することができる、取り扱いが簡単(安全)、安価、大量にある、というたくさんの長所をもったエネルギーです。


ですが、この化石燃料は枯渇するという運命にあります。
石油、石炭は古代の植物が地中に埋まり、長い年月高い圧力にさらされて初めてできるものです。毎年の石油産出量は増加傾向にありますが、そのピークがもうすぐやってくるといわれています("ピークオイル"といいます。詳しくはこちら)。


つまり石油に代表される化石燃料には限りがあります。現在、そして世界を動かすエネルギーの大部分は、この化石燃料です。


また石油は地球どこでも得られるわけではなく、その産出国は限られます。
つまり産油国の思惑で、その供給がコントロールされる危険性があります。


よって石油は枯渇や産油国の存在から、供給にリスクのあるエネルギー源であるといえます。


■エネルギー問題への脆弱性を示すGOC
ということで、自然エネルギー原子力の割合は低くならざるをえず、化石燃料に大きく依存している国がほとんどです。

その化石燃料は先ほど申し上げたとおり、枯渇の可能性があります。
よって、化石燃料はエネルギー問題を引き起こす大きな要因となっています。


世界の各国は多かれ少なかれ化石燃料に依存しています。そして化石燃料を消費すれば必ず二酸化炭素が発生します。


ここで先日定義したGOC(GDP on Carbon)を考えます。GOCは単位二酸化炭素あたりに生み出すことのできるGDPの額です。

つまりGOCが小さいほど、化石燃料の枯渇が経済活動に影響を与える割合が高い、エネルギー問題に対して脆弱であることをしめしています。



■GOCから考える日本の二酸化炭素外交
二酸化炭素外交」なんていう言葉があるかわかりませんが、現在国際政治の舞台では、二酸化炭素の排出量をめぐってさまざまな駆け引きがあります。
ですが、駆け引きの前に、基本的なルール、原理原則を理解する必要があります。


繰り返しになりますが、GOCは経済の二酸化炭素(=化石燃料)への依存度です。
この値が小さい国(=同じGDPを生み出すのにたくさんのCO2を消費する国)は、エネルギー問題に対しての脆弱性が大きいといえます。
GOCが小さい国は、エネルギー問題が起きたとき、その経済がクラッシュしてしまう可能性が大きいといえます。


たくさんのGDPを稼いでいる、アメリカ、中国などはGOCが低く、エネルギー問題に対する脆弱性が高いといえます。これらの国の経済が傾けば、そのほかの国も大きなダメージを受けてしまいます。
つまりこれら国のGOCの低さは、その国にとっても、世界にとってリスクです。


なので、GOCの向上、すなわち二酸化炭素の削減(とGDPの向上)は、環境問題という側面よりは、経済的側面からの要望といえます。
日本はこの姿勢を明らかにし、世界に対して訴えていくべきだと考えます。


政治的な要望のみではなく、技術的支援などを行うべきです。
とくにいまや世界の工場である中国の生産効率の向上などはGOCの向上に劇的に効果のあるものではないでしょうか。そしてその余地はたくさんあるのではと思います。


また技術提供、指導はモノではなくソフトの形で有償で行うべきと思います。
そのことで、日本もまた二酸化炭素の排出量を抑えながら稼ぎを上げることができ、日本のGOC向上も見込めます。

温暖化防止のための二酸化炭素削減ではなく、エネルギー問題による経済のクラッシュを回避するための二酸化炭素削減、この視点が重要です。


そして世界にもその観点で二酸化炭素削減をもとめていくべきでしょう。二酸化炭素GDPの比率を考えよう、GOCが小さい国にはとくに経済にリスクを抱えているということを指摘すべきでしょう。


■CO2削減は石油の需要をさげるので、オイルメジャーを抱える欧米は二酸化炭素の排出規制を嫌がる?
ただ、現時点から二酸化炭素削減を進めるということは、まだピークを迎えていない、供給力のある石油という商品の需要を小さくしてしまうことになります。


たくさんのオイルメージャーを抱えるアメリカ、欧州などはそんなことにはすでに気づいているでしょう。そのために、二酸化炭素の排出量の削減にそれほど積極的ではなく、中国などにも圧力をかけないのではないでしょうか。


また日本が25%削減したところで、それによって少なくなる石油の削減量もたかが知れているので、ヨーロッパ各国は、表面上は賞賛しているものの、うらでは石油商売にそんなにリスクではない、とでも考えているのでしょうか。


ただ本質的に化石燃料が経済にとってリスクのあることには変わりません。欧米もそこは気づいているはずで、石油という商品を売り切ると同時に、新エネルギーの開発に躍起になっているのではないでしょうか。


日本は二酸化炭素の削減のまえに、新エネルギーへの転換をめざし、残っている石油をつかってその設備を整えるという戦略が必要です。


二酸化炭素(=脱化石燃料)でGDPをあげていく、これが今後目指すべき姿だと思います。


※上記は私の個人的な考察です。一般的にそういわれてるのか、どのくらい正しいのかは保障しかねます。もし本当かな、と思ったら、ご自分で調べたり、考えたりしてください。

もし間違いなどを教えていただければうれしく思います。