iPS細胞は人類を幸せにするのか
みなさんこんにちは。fusatonです。
壮大なテーマに挑み続けている本ブログですが(笑)、
今回も大き目のテーマです。
iPS細胞、このブログを訪問いただいている方々はもうご存知だと思います。
いまはまだ開発途上ですが、様々な疾病を癒すことのできる万能テクノロジーとして期待がかかっています。
さて、このiPS細胞、病を治すことはできるかもしれませんが、
人を幸せにするのだろうか、とふと思ったので、今回考察します。
■iPS細胞とはなにか
iPS細胞とはなにか。一応あげておきます。
iPSとは、induced pluripotent stem cellの略で、
日本語でいうと「人工多能性幹細胞」です。
細胞というものは、一度分化(受精卵のときに何にでもなれる可能性がある細胞が、分裂を進めるうちに皮膚や筋肉の細胞のように役割が固まってしまうこと)してしまうと、もう他のものにはなれない、という性質があります。
皮膚も細胞からなっていますが、突然皮膚が筋肉になったり、心臓になったりはしません。
ですが、iPS細胞は、分化してしまった細胞を、受精直後の細胞のように、何にでもなれるような状態に細胞の状態を戻してしまう、というまことに不思議な現象です。
これを利用して、特に再生医療の分野や、創薬・製薬分野での応用が期待されています。
■iPS細胞の主な用途
再生医療の分野では、たとえば何等かの問題が生じて機能しなくなってしまった臓器、肺、心臓などをiPS細胞を使って「再生」して、臓器移植をする、というようなことが考えられています。
創薬分野では、たとえばある種類の細胞における薬の反応性をみたり、一人ひとりの体質にあった薬を見極めるために、患者さんの細胞をiPS化して、それを目的の細胞に分化させ、そこに薬を与えて様子を観察する、といったことが考えられています。
このように、iPS細胞は、現在の技術では解決の難しい疾病を克服するための強力な手段となる可能性を秘めています。
■iPSはQOLの向上に寄与する
このように将来有望なiPS細胞ですが、果たしてこの細胞は人類を幸せにするのでしょうか?
私は、iPSは人のQOL、クオリティオブライフの向上にとても寄与すると思っています。
事故や病気で体の臓器、器官が不自由になってしまった場合、
生活が大変になるのに加えて、医療のランニングコストがとても高くなってしまいます。
ですがiPS細胞の技術が確立され、コストが下がって、保険も適用できるようになれば、一時の費用負担で済みます。
そして生活の質は向上します。
その意味で、iPS細胞はとても有望だと思います。
■iPS細胞は寿命を延ばすのか?
では人類の夢の一つである寿命の伸長に、iPS細胞はどれくらい寄与するのでしょうか。
人間の細胞の寿命は長くても120年ぐらいと言われています。
iPS化細胞から作った臓器も、結局はこの呪縛からは逃れられません。
(細胞老化を食い止める技術が開発されればまた話は別ですが)
iPSを使って寿命を延ばす方法の一つは、臓器の置き換えを定期的にしていく、という方法です。
ちょっと気持ち悪いですが、心臓や肺など、老化が進んで来たら、iPS細胞から構築した新しいものに置き換えていくのです。すべての臓器でこの置き換えが可能で、古いものと新しいものに何等かの拒絶反応のようなものが出なければ、永遠にこの方法で生きていくことが可能でしょう。
ただ、「すべての臓器」といいましたが、それには「脳」も含まれます。
脳は人間の意識、記憶をつかさどる臓器です。
これをハードウェア的には構築できるかもしれませんが、古い「脳」から新しい「脳」に記憶を移すことができるのか、そもそも「意識」がなんなのかわかっていないのですが、その「意識」とやらを新しい「脳」に移せるのか。それができたとして、前の自分と連続性を保てるのか。
やってみなければわからないですが、倫理的、哲学的な問題も考えていかなければならないでしょう。
仮にそれさえもできるのであれば、iPS細胞は寿命を伸長することができる、と言えるでしょう。
ただ、このようにして長生きした人間が幸せを感じるかどうかは、私には疑問に思えます。以前にも述べましたが、寿命の伸長は新しいヒトが生まれてくることを阻害すると思うのです。
ある年代に生まれた人間ばかりになってしまうと思うとちょっとゾッとします。
ですので、iPSは寿命の伸長に寄与する可能性はありますが、
このことで人類は幸せにはなれないのではないか、というのが私の考えです。
iPS細胞は人類のQOLの向上に寄与し、その一点においてiPSは人類を幸福にするのだと思います。